まとめ

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2017年7月28日金曜日

Bloodborne DLC考察 双子の悪夢

1.はじめに

本編ではなくDLCの考察をする理由

1.本編の資料が膨大すぎて手に負えない
2.フロムゲーのDLCは本編を解体・圧縮し再構成したような構造となっている
3.本編とDLCを対比することで、相互に補完できる

1に関して言えば、時間的な制約(ドラクエ11)があり断念したという救いようのない事情があるが、さらにいえばDLCの考察といっても、その焦点はゴース周辺のものだけである

2に関して言えばDS3のDLCに顕著に表れているのだが、フロムゲーのDLCは基本的に本編と鏡像関係にあるといっていい

DS2の本編である王殺しの物語とDLCの王たちの物語に関してもそうであるし、DS1のDLCも今思えば、本編は英雄の成功譚であり、DLCは英雄の失敗譚である

単純にそっくりというわけではなく、構造を解体し、圧縮、再構成した上にさらに別の角度からの視点を導入している

3については、補完といってもごく一部であり、全体として完全に説明できるようになるというものではない
その多くは、DLCのごく狭い範囲、人々の行為を理解できる範囲でこじつけたという程度である

DLCの大まかなストーリーライン

端的にまとめるとDLCのストーリーは、
主人公が狩人の秘密に迫り、その根源を消滅させることで悪夢を終わらせる
となる

実はこれ本編とほとんど同じである。ちなみに本編をざっとまとめると
主人公がメンシス学派の儀式に迫り、その根源を消滅させることで悪夢を終わらせる
となる

要約マジックと言われれば否定しないが、フロムゲーの本編とDLCの関係を見ていると、故意にこうした構造を取っているのではないかと邪推したくもなる

さて、大まかなストーリーがわかったところで、次に小さな考察をいくつか述べていこうと思う

DLCと全く関係のない部分の考察であったり、結論を示さずにぶつ切りだったりするかもしれないが、最終的な考察に繋がるので、外せなかったのである

先に小さな考察を述べるのは一本の考察にまとめようとすると、その都度考察を挿入しなければならず考察が冗長になり、また散漫なものとなるからである


2.三本目のへその緒

ゲーム内に4つ存在する「三本目のへその緒」のなかでもメルゴーが持っていたへその緒の考察をしたいと思う

ゲーム内ではメルゴーの乳母を倒した後、赤子の鳴き声が止んだ後に手に入るアイテムだ
よって、これはメルゴーが持っていたへその緒だと考えるのが正しい
そのアイテムテキストにはこうある
別名「瞳のひも」としても知られる偉大なる遺物
上位者でも、赤子ばかりがこれを持ち
「へその緒」とはそれに由来している
全ての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれはメルゴーとの邂逅をもたらし
それがメンシスに、出来損ないの脳みそを与えたのだ(三本目のへその緒)
単純にテキストを読むと、
メンシスはメルゴーが持っていたへその緒を用いて、メルゴーと邂逅を果たした

これから読み取れることはなんだろうか
1.メルゴーの持っていた三本目のへその緒は、かつてメンシスが所有していた
2.メルゴーとの邂逅の後で、へその緒はメルゴーの手に戻った

つまり、上位者の赤子は三本目のへその緒を持っているけれども、赤子とへその緒は分離不可能なわけではなく、誰かに奪われたり、失くしたりすることもある

そしてへその緒は上位者との邂逅をもたらすけれども、上位者の本当の目的は赤子であって、へその緒そのものではない

という考察が得られる

3.ゴースの妊娠

海岸に漂着した上位者ゴースの死体
 その死体からゴースの遺子が生まれることとなる

 しかし、である
全ての上位者は赤子を失い、そして求めている(三本目のへその緒)
ゆえにゴースが妊娠していたというのはありえないこととなる

 しかし自然妊娠するはずのない上位者がやがて遺子を産むのは事実である
 この矛盾した現象を説明できる仮説は一つしかない

 漂着後、何者かによって人工的に妊娠させられたのである

 だが「死体」を妊娠させることなどできようか

 当然、不可能である

 ここにある冒涜的な行為が隠されている

 秘匿され、封印され、狩人の原罪となった冒涜的行為
 それこそが上位者を妊娠させるという儀式であった

 上位者を代理母とし、上位者の赤子を産ませる儀式だ

 そのために後に狩人になる者たちは何をしたのか
 科学的な人工授精、さらには受精卵の代理母への着床など不可能な時代背景である

 そこで彼らはその稚拙な科学技術の範囲内でできる限りのことをした

 生まれたばかりの赤子を、再び胎内へ戻すという冒涜的な手術がそれだ

 だがそれこそはトゥメルの時代に行われた儀式の再現でもあった
 では、それはいったいどういった儀式だったのか

4.女王ヤーナムの妊娠

トゥメル人は上位者の眠りを祀っていたという
 
それは、上位者の眠りを祀るトゥメル文明の末裔たちが
せめて彼らの王を戴こうとした証しであろう(トゥメル=イルの大聖杯)

そしてトゥメルの女王、ヤーナムは上位者の赤子たるメルゴーを身籠った
しかし生まれたメルゴーは何者かに奪い去られ、やがて悪夢そのものとなってゆく…

いや、そうではない。メルゴーは悪夢そのものとして生まれたのだ
ゆえにメルゴーの鳴き声が泣き止んだときに「HUNTED NIGHTMARE」と表示される

ではその悪夢を見ている主体はだれか

ヤーナムの石である
女王ヤーナムの遺したヤーナムの石にはこうある

トゥメルの女王、ヤーナムの残した聖遺物
女王の滅びた今、そのおぞましい意識は眠っているだが、それはただ眠っているにすぎない…(ヤーナムの石)
ヤーナムは悪夢を産んだが、その悪夢は上位者である(三本目のへその緒を持っている)
そしてその悪夢を見ているのは、ヤーナムの石である(上位者の眠り)

ヤーナムの石(上位者の眠り)を使い、メルゴー(上位者の赤子)を得るために、トゥメル人はある手術をヤーナムに施した

ヤーナムを代理母として自らが祀る「上位者の眠り」を胎内へ移植したのだ

女王はヤーナムの石を孕んだのである
宗教学者エリアーデによれば鉱物と胎児とは置換可能であり、かつて鉱物は大地の胎児だと考えられていた
鉱物的物質は大地母に帰属する聖性を分有していた。非常にはやくからわれわれは鉱石は胎児のやり方に倣って大地の母体内で「成長する」のだという観念に対面している。(『鍛冶師と錬金術師』エリアーデ)
そうしてヤーナムは悪夢を産んだ
だがそれは悪夢ゆえに曖昧な存在として母の手を離れてしまう

母の手に残されたのはヤーナムの石だけである

Bloodborneにおいて遺志と遺子と石は明らかに関連付けられている
その悪夢的な世界観のなかでは、それらは同一のものとして機能し、また混同されている

ここで三本目のへその緒の英語版テキストをBloodborne設定考察 Wikiから引用する
"Every Great One loses its child, and then yearns for a surrogate.
The Third Umbilical Cord precipitated the encounter with the pale moon,
which beckoned the hunters and conceived the hunter's dream."
- Abandoned Workshop
その日本語訳がこうである
上位者は自身の赤子を失い、その代理を求めている。
青ざめた月は狩人を呼び、狩人の夢を想像した/妊娠した。
代理を意味するsurrogateは、代理母を意味するsurrogate motherとして使われる
さらにconceivedの意味は想像であるが、conceive a childで「子を宿す」となる

さて、この母胎内へ何らかの生命体(胎児、上位者、人)を移植し「産みなおさせる」という概念は、ヤーナムの世界に連綿と続いていくことになる

それがゴースを妊娠させるために使われ、さらにその技法は「手術祭壇」として具現化される
手術祭壇にローレンスの頭蓋が入っているのも、これらから説明できる(もっともローレンスの人としての頭蓋は悪夢のなかにしか存在しないが)

手術祭壇とは彼ら(医療教会)の儀式概念を、具現化したものなのだ
その根底にあるのは、母胎内回帰と「産みなおし」の概念である

5.冒涜的儀式の結果

さて、トゥメルから受け継がれた「産みなおし」の儀式がゴースに対して行われた結果、どうなったのか

 ロマが瞳を得て上位者となり、ゴースの息子はおぞましい状態で誕生した

ミコラーシュがゴース、あるいはゴスムの名を呼ぶのは、上位者の名前が分からなかったからではない
ロマに瞳を与えたものが、ゴースなのかあるいはゴースの胎内に宿るゴースのムスコ(ゴスム)」なのかわからなかったからだ

だが、どちらかがロマに瞳を与え上位者とした
ゆえにミコラーシュは両者に願うのである

漁村での失敗を糧にミコラーシュは儀式を完全なものにしようとする

ゴースの遺子が不具の状態で誕生したのは、代理母であるゴースが死体だったからであり、また手術に使用された人の赤子の力が足りなかったからだ、と考えたのだ

そこでミコラーシュは生きた上位者を捕らえようとメルゴーを利用し、儀式に使う人間の数を増やした

そのひとつの成果としてボス再誕者が生みだされることとなる

 再誕者とは「生贄」が「上位者」により「産みなおされ」「再度」「誕生」した「」たちの姿なのである

6.マリア

儀式の後、マリアは狩人の悪夢に留まり不具の赤子冒涜的な儀式の事実を秘匿する

ここで一つ疑問が浮かぶ。なぜマリアはそれを秘匿しなければならなかったのか

説明としてよく挙げられるのは、漁村の虐殺に狩人が関わってしまったことを恥じてそれを隠した、というものだ
 
以前から不思議に思っていたのだが、いかにマリアが潔癖で高潔な人格だったとしても、自分が主導したわけでもない、たかだか一漁村の虐殺程度で剣を棄てるものだろうか

時代背景から考えると、その程度の悲劇はどこにでも転がっているだろう

たとえ師であるゲールマンに失望したとして、狩人そのものを見限ったとして、
では、その行為を恥じて秘匿する必要彼女にはあったのだろうか?
単に狩人や師から離別するのではなく、なぜ隠す必要があったのだろうか?

しかも彼女はその後、実験棟においてある意味漁村よりも残酷な実験を許容している
何かかみ合わない気がするのだ

マリアには漁村を秘匿しなければならない切実で個人的な問題があったと考えたほうが腑に落ちる

では切実で個人的な問題とは何だろうか

結論から先に述べると、
冒涜的な儀式に使われた赤子はマリアの産んだ子であり、その無残な結果に彼女は耐えられなかったのだ

ただしよく言われるようにその子の父親はオドンではない
オドンであったのならその時点で上位者の赤子が得られているはずでゴースに頼る必要はない
父親の最も可能性が高いのはゲールマンだ。その理由は後述する

ゲールマンの狂熱は、マリアのうちに流れる穢れた血(カインハーストの血)に目を付けた
上位者の赤子として生まれ変わる資格を持つもの、それはトゥメルの血を遠く受け継ぐマリアの子が相応しい
マリアその人ではだめだ。赤子として生まれるからには、赤子を使う必要があった(少なくともゲールマンはそう考えた)

そしてゲールマンはマリアを強引に説き伏せ、我が子を冒涜的儀式の生贄として捧げたのだ
結果は無残なものだった
確かに生まれたはずの我が子は、上位者でも人でもないおぞましい存在となって現世に繋ぎ止められている(プレーヤーが戦う遺子ではなくて、黒い人影のほうがゴースの遺子の本体)

自らの恥ずべき行為と、その報いに打ちのめされたマリアは、その陰鬱な事実を秘匿することを決意する
時計塔のマリアとなった彼女は、実験棟で繰り広げられる残虐な実験にそれほど関心を向けず、棄ておいた我が子を、みじめな姿の赤子を、自らの恥部を、隠し続けてきた

7.ゲールマン

儀式の無残な結果は、父親であるゲールマンにも影響を与えていた
狂熱が醒めたゲールマンは、それ以後の行動原理である弔いと葬送に身を捧げる

ゲールマンは狩りを、弔いになぞらえていたのだろう
せめて安らかに眠り、二度と辛い悪夢に目覚めぬように(葬送の刃)
そしてゲールマンはミコラーシュにあることを頼む
人形作りが得意な友人に美しい人形を作らせたのである

ミコラーシュ戦で戦いの邪魔をしてくる操り骸パペットと酷似した外見をし、操り人形のような動作をする
さらに彼の関係する場所(ヤハグルなど)にはアメンドーズがなぜか存在し、
アメンドーズのいる場所には「ほおずき」がいる(悪夢の辺境など)

DLCにほおずきがいた理由もこれから説明できる

ミコラーシュは人形作りが得意であり、
カラクリあるいは神秘的(月のフローラ、使者)な力を用い、人形を操ることができた
ほおずきはもともと、ミコラーシュの調査に同行する自動人形(オートマタ)的な存在だった
DLCのほおずきは、漁村の調査に同行させたほおずきが主に捨てられ悪夢に取り込まれたなれの果てなのだ

人形からほおずきが生まれたのではない
ほおずきこそが、人形の原型であり、ゆえに同じ服を着用している

だが、なぜゲールマンは人形を必要としてのか?

世界各地の古い習俗に冥婚と呼ばれるものがある
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A5%E5%A9%9A
夭折した死者が未婚だった場合、その結婚相手として花嫁・花婿人形を作って死者と婚姻させることで死者を弔う、という風習だ

ゲールマンには曖昧な存在となった我が子の花嫁となる人形が必要だった
そうすることでゲールマンは我が子を弔い、葬送しようとしたのだろう
(ゲールマンの行為にはすべて葬送、弔いという意味がある)

人形が喪服を着ているのは、夫の死後、喪服を着続けたヴィクトリア女王のオマージュであり、その意味するところは、夫に先立たれた寡婦である

だが、ゲールマンの目的は果たされなかった。マリアが我が子を秘匿してしまったからだ

ゆえに人形は花婿と添えず、宙ぶらりんの状態に甘んじている

マリアが倒されたことでついに目的を遂げることができるようになるものの
人形本人は自分の生まれた理由を知らないので、重い枷がはずれたようにしか感じない

マリア撃破後の人形のセリフ
先ほど感じられたのです。私のどこかで、どこか中で、重い枷がはずれるのを
不思議ですね。元より、私のどこにも、枷などありませんでしたのに
クスクスクスッ

8.ローレンス

狩人の夢はゲールマンと密接な関係にある場所のように思えるが、実はローレンスとも関係が深い
この狩人の夢を作ったのは月の魔物だが、教室棟にあるメモには、

ローレンスたちの月の魔物。「青ざめた血」
とあり、むしろローレンスに関連する上位者として認識されていたことがわかる
 
さらにはゲールマンが寝言でこういう
「…ああ、ローレンス…ひどく遅いじゃあないか…」
この言葉は狩人の夢をローレンスが訪れることを想定しない限り出てこない
さらに、
「…私はもう、とっくに、老いた役立たずだよ…」
とあるので、寝言は助言者となり狩人の夢に囚らわれた後のゲールマンがしゃべっているとわかる
 
ローレンスが狩人の夢を訪れていた可能性は高い
悪夢というのは上位者に謁見する場でもあるからだ
悪夢の上位者とは、いわば感応する精神であり
故に呼ぶ者の声に応えることも多い(「月」カレル文字)
そして狩人の夢も「悪夢」のひとつである
過去、多くの狩人様がこの悪夢を訪れました
ここにある墓石は、すべて彼らの…名残です
もうずっと前の話ばかりに思えますが(人形のセリフ)

ローレンスは狩人の夢において月の魔物と交流していた
その触媒となったのが、ゴースの遺子が持っていた「三本目のへその緒」だろう
(上記で記したように、へその緒と赤子とは分離可能である)

さて、月の魔物と見えたローレンスだが、やがてその忌まわしくおぞましい姿恐怖を募らせてゆく
己の内にある獣性に気づかされ(赤い月により獣化しかけたかもしれない)、その類似性恐れた

恐怖に耐えきれなくなったローレンスはついに月の魔物と離れる決意を固める
その根底にあったのは月の魔物の姿であり、獣となった自分の姿であった

最も獣を恐れるものが、最も恐ろしい獣となる
月の魔物を目の当たりにしたローレンスの心には他の者よりも強い恐れがあったのだ

ローレンスが狩人の夢を去る時、ゲールマンはローレンスとある誓約を結ぶ
獣性を克服し、この悪夢から私を解放してくれ、という誓いであった

それは、終に守れなかった過去の誓いであり
故にローレンスはこれを求めるだろう
追憶が、戻るはずもないのだけれど(ローレンスの頭蓋)

ローレンスは触媒として使っていた三本目のへその緒を古工房に置き、狩人の夢と決別する。彼はその後血の医療へと邁進することとなる

こうして狩人の夢に関わる者月の魔物ゲールマンだけとなった
いや、もう一人。上位者の赤子の花嫁となるべく作られた人形がいる
 
としてのゲールマン
としての月の魔物
花嫁としての人形

こう考えると花婿たる赤子だけが欠けている

父であるがゆえにゲールマンは狩人に狩りを全うさせねばならない
狩りにより、三本目のへその緒を手に入れなければならない
上位者を呼ぶ赤子を狩り、その血の遺志を奪い、その証拠として三本目のへその緒を手に入れた狩人こそが赤子となるからだ

冒涜的な儀式に我が子を生贄として捧げたことへの悔恨の念がゲールマンを囚らえている
狩人の夢とは、最初の狩人であるゲールマンの悪夢でもあるのだ
ゲールマンはその夢の中で、我が子を生贄として捧げる父親の役割を繰り返し演じさせられている

悪夢から逃れる方法は一つしかない
儀式を終わらせ、赤子を捧げることで、月の魔物は去り、獣狩りの夜が終わる
そうすることで初めて、ゲールマンの悪夢も終わる
次の獣狩りの夜までのひと時の安らぎが得られる
 

7.冒涜的な儀式

冒涜的な儀式とは、人の赤子を代理母たる上位者の胎内に戻し(あるいはその逆)、産みなおさせることで特別な赤子を得る儀式である

漁村の海岸で儀式が行われた時にその場にいたのは
ローレンス、ゲールマン、マリア、ミコラーシュ、そしてロマである
 
赤子として選ばれたのはマリアの子
代理母となったのがゴースの「死体」である

ゴースの胎内に赤子が宿った時、まず起きたのはロマの変化である
ロマは脳に瞳を得て上位者となった(おそらく内的な変化のみであり、それは人格の崩壊としてやがて表面化する)
ドストエフスキーの『白痴』に登場するムイシュキン公爵のようにロマは癲癇のような症状を呈し、やがてすべて忘れた
 
ロマの変化をミコラーシュは目ざとく察したが、ロマに瞳を与えたものゴースなのか
それともゴースの死体に宿った赤子(ゴスム)なのか判断できなかった

次に起きたのが赤子の流産である
赤子は再誕することなく(母が死者ゆえにそれは決定づけられていた)水子となった

死者から生者が誕生することはこの世の摂理として絶対にあってはならない、とされる
これに関しては宗教学的には異常出産というカテゴリがあり神話、伝説上の類例が多々ある(ベルセルクのガッツもそう)

同様に上位者の胎内に宿った赤子は異常出産により異常な状態で誕生する
生と死の境が曖昧となり、赤子は生でも死でもない存在へと至ったのだ

ゴースの遺子はおぞましい状態で誕生した
いや誕生したとは到底言えない状態で世界に存在することとなった

尋常に誕生することなく、それは死産に近いものであった
だが上位者の影響を受けているゆえに、遺子は世界にとどまらざるを得なかった
(異常出産で生まれた子は英雄や神話的、神秘的な存在となることが多い)

ゴースの遺体から立ち上る黒い人影
この黒い人影こそがゴースの遺子の本体であり(HUNTED NIGHTMAREと表示されるのは黒い人影を切ったあと)
ボスとしてのゴースの遺子は、ゴースの遺子意志により顕現した代理構成体である

代理構成体とは、赤子であるゴースを守る者としてゴースの遺子が作り出した守護者である(本編ではその役割はメルゴーの乳母

代理構成体はローレンスたちが冒涜的な儀式を行った時にも現れたはずだ
(悪夢とは繰り返されるもの。狩人の悪夢もまた悪夢が狩られるまで幾度も繰り返される)

ゲーム中、ゴースの遺子戦前のムービーにおいて、ゴースの遺子が月を見上げて泣くシーンがある
特別な赤子ゆえに彼は上位者を呼ぶのである

そうして到来したのが、月の魔物だった
月の魔物はゴースの遺子の代理構成体を抱擁し赤子を得た
プレーヤーが月の魔物と戦う前のムービーと同様の光景が繰り広げられたはずだ
 
代理構成体はそうして月の魔物に吸収された(妊娠しなおされた
だが本体は受肉した赤子ではないがゆえに放置された
残ったのは三本目のへその緒だけである

ゲールマンはそのへその緒を拾う
曖昧な存在となった我が子の、唯一残した痕跡だった

上位者でも、赤子ばかりがこれを持ち
「へその緒」とはそれに由来している(三本目のへその緒)

月の魔物は三本目のへその緒を持つゲールマンに気づき、呼んだ
上位者は自身の赤子を失い、その代理を求めている。
青ざめた月は狩人を呼び狩人の夢を想像した/妊娠した。(Bloodborne設定考察 Wikiから引用)

どこへ?

自らの胎内である
そこはゴースの遺子の代理構成体が孕まれている子宮であり、その場所こそが狩人の夢となった
 
月の魔物の腹部が開放されているのは、そこにあるべき子宮が狩人の夢として展開されているからである
ゲールマンは月の魔物に吸収され肉体を失い、月の魔物の子宮である狩人の夢に住まうこととなった
そして月の魔物のために、特別な赤子を狩り集めるという悪夢のような仕事に従事させられる

特別な赤子が生まれる→上位者が釣られて到来する→その影響で人々が獣化する
人々の獣化は特別な赤子がいることを表している
よって、狩人が赤い月の夜を終わらせるために、赤子を狩りその血の遺志を収集し、上位者へ捧げねばならない


8.双子の悪夢

さて、こうしてビルゲンワースの介入によって始まった漁村民虐殺は終焉を迎える
調査隊である若き探究者たちは漁村で尋常でない存在と遭遇し、彼らの人生と世界の未来が歪み始める
 
狩人と狩人の夢が誕生し、ヤハグルにおける大量供犠虐殺の種子がまかれ、圧倒的な獣性を目の当たりにして、それを克服できるものとしての血の医療への道が示される

しかしやがて悪夢を終わらせる異邦人が到来する  
狩人の悪夢に隠された秘密を暴き、秘密そのものを葬ることで悪夢を終わらせる異邦人だ

上位者に孕まれた狩人の夢をその代理母である月の魔物を葬ることで終わらせ、上位者の赤子として再誕する異邦人だ(それはあたかも卵の殻を割り生まれ出るように)

狩人の夢と狩人の悪夢、この二つの悪夢に共通するのは両方とも「赤子の見る夢」であるということだ
そして二人の赤子はゴースの遺子生者死者に分かたれた鏡像関係にあり、同時に産まれた双子でもある

彼らの見る双子の悪夢が終わる時、死者は海の底へ帰り、生者は再び生みなおされる
生者は異邦人と融合し、十全な上位者の赤子としてこの世に再誕するのだ

花嫁は花婿を失い、しかし再誕した花婿と再会するのである
(幼年期の終わりEDにおける人形の言葉遣いは、我が子に対するものではない)

補足1.ビルゲンワースか狩人か

ビルゲンワース…ビルゲンワース…
冒涜的殺戮者…貪欲な血狂い共め…
奴らに報いを…母なるゴースの怒りを…
ギイッ!ギイイッ…(漁村民のセリフ)
狩人の悪夢の根底に存在する漁村は、狩人の罪であるはずだ
にもかかわらず、漁村民が呪詛の言葉を吐きかけるのはビルゲンワースに対してだ

なぜこのような歪みが生じているのかというと、ローレンス率いるビルゲンワースの調査隊が、この漁村の浜辺での出来事を機に独立した狩人という組織となったからだ(もっともローレンスは本格的に参加する前に離脱してしまうが)

ビルゲンワースとして漁村に赴き、狩人となって漁村から出てきた
ということは、月の魔物との邂逅は漁村で起きたとしかタイミング的に考えられない

全ての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし
それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ(古工房のへその緒)
漁村事件の前にすでに狩人であったのなら、漁村民はビルゲンワースではなく狩人へ呪詛の言葉を吐いたはずである
同様に、漁村事件の後に狩人となったのなら、それは狩人の罪とはならず、ビルゲンワースの罪となっていたはずだ(狩人の悪夢ではなく、ビルゲンワースの悪夢となっていた)

探究心に燃えるビルゲンワースの研究者たち(ローレンス、ゲールマン、マリア、ミコラーシュ、ロマ等々)により漁村民の虐殺が行われ、その中でも特にゴースへの儀式に関与した者たちが狩人となった
そして最も儀式と関係の深いゲールマンが狩人の祖となり、狩人が始まった

儀式に参加した者たちはそれぞれの道を歩み始め、それはやがて本編へと収斂してゆく
本編の物語の基となった出来事、それこそがビルゲンワースによる漁村調査だったのだ

補足2.上位者と赤子

そもそも上位者は赤子を得てどうするの?
その根本的な問題に対する自分なりの答えを示そうと思う

Bloodborne設定考察 Wikiの三本目のへその緒のページに宮崎氏のインタビューが載っている。以下抜粋引用(強調は筆者)

生物は強くなればなるほど、進歩すればするほど子孫を残すことがなくなります。
人間でさえも、先進国であればあるほど出生率は下がりますよね?
話を元に戻すと、そのような事実がアイディアの根底にあるのではないかと思います。
出生率の低下という事実がアイデアの根底にあると氏は述べている
博覧強記の宮崎氏のことであるから当然、出生率の低下だけではなくその周辺に関する知識も得ているだろう

出生率の低下からくる人工授精、あるいは代理母、さらには遺伝子操作(ゲノム編集)。それらの科学的概念をヴィクトリア時代のゴシックホラー+クトゥルフホラーへと落とし込んだ場合、当然悪夢的な様相を呈することとなる

上記で述べた胎内回帰と産みなおし、さらに遺伝子を改良するために上位者という生物を利用することなど、いわば科学の持つ側面悪夢的な角度から見たものがブラッドボーンの物語なのだろうと私は考える

さて、物語内で上位者は赤子を欲している
で、赤子を得たらそれをどうするの?

当然、赤子は自分の子孫でなくてはならない(養子を欲しているわけではない)
そこで上位者は、自らの子として産みなおそうとするのである

男性的なオドンは自分の子を宿してくれる代理母を求め母性的な月の魔物は、自分の子宮内へ赤子を宿そうとする(代理母になろうとする

そうして生まれた赤子こそが上位者の子孫と呼べる存在なのだ

最初の疑問に戻ろう
そもそも上位者は赤子を得てどうするの?

生物学的な父親、母親になろうとするのである

補足.その他

男性型・女性型の上位者
男性型上位者は赤子を求めない
ゆえにオドンは赤子争奪戦を尻目に、女性を妊娠させて回っている
赤い月が近づくとき、人の境が曖昧になるため、生殖のチャンスが生まれる
だが、それが成功したことはない

女王ヤーナム
メルゴーの高楼にたたずむ女王ヤーナムの目的は赤子を奪い返すことではない
悪夢として生まれた我が子の解放を願っている
ゆえに、メルゴーを狩った狩人に対してお辞儀をするのである
赤子を取り返したいのだとしたら、赤子を狩った狩人にお辞儀などしないはずである

9 件のコメント:

  1. あまりの考察力に驚嘆しました。この考えだと全てが納得でき、しかもその考察が全て根拠に基づいていることから、ブラッドボーン考察の全ての中で1番真実に近いと思いました。素晴らしい考察をありがとうございます。

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  2. これは凄い。相当な見聞の広さによって正確な角度から考察していて、とても筋が通って見える。自分も何度もプレイし、色んな方の考察やクトゥルフ関連の資料も見ながら考えたけれど、この考察は真実に近いものだと思う。感嘆した。

    返信削除
  3. コメントありがとうございます
    なにぶん急に思い立って書いた考察なので説明不足の点や不明瞭な点が多々あると思いますが、なんとか大意は伝えられていたようで幸いです
    読み直してみると齟齬が気になったり、別の仮説を思いついたりもしたのですが、大まかな結論は変わらなそうなので、このままで置いておきます

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  4. 恐らく、最も真理に近い解釈かと思われます。
    暇な時にでいいので、本編の掘り下げた解釈も是非、お願いしたいです。

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  5. マリアは禁断の血よって生まれた女王の傍系であること、禁断の血は漁村から持ち帰った物と推察される事から漁村襲撃時にマリアが居る事には時系列的な矛盾が生じる。また漁村はビルゲンワースが襲撃した事から(ビルゲンワースはウィーレームを学長とし思考の瞳を探求する組織である)瞳の探求が目的の筈なのに何故いきなり話が飛んで赤子を得る話になったのか不明。この段階では人類は初めて神秘に見えてそしてそこで初めて上位者の思考、すなわち瞳の探求を開始したという記述もあったはず。赤子を得ようとしているのはまだこの段階では上位者だけの話である。ブラドーが漁村の秘密を守ってるのは何故?マリアの私事だけで漁村を秘匿してるならそこにブラドーがいたら不自然になる
    それにゲールマンの双子に対する葬送に主人公が狩り出されるのも不明だしそれが獣狩りと結びつく根拠が薄い、何故なら劇中でへその緒を使うと上位者の赤子になれることを知っている人物は誰一人として居ないし、そもそも月の魔物倒して赤子になる過程でゲールマン召されてるけど主人公が赤子になったらゲールマンが何食わぬ顔で戻ってくる事になるよね?笑い 仮に主の考察全てに頷いたとして主人公が赤子になっちゃったら人類は幼年期のはじまりで新たなステップ踏んじゃうけどゲールマンはまだ葬送葬送言ってる事になるけど大丈夫なの?

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  6. あ、追加で感想
    ローレンスが悪びれる様子もなく夢に囚われてるゲールマン切り捨てたのは笑った

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  7. とても素晴らしい考察です。何度も読み返しました。ありがとう!

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  8. とある方の動画でシードさんのことは知っていましたがブログは読んでいませんでした。
    ですが最近ブラボを再びやり直していろいろな考察を読み漁っていたところここにたどり着きました。
    多様な考察、大変参考になります。
    個人的なことですがDLCコンテンツは今年の2月始めに手をつけました。
    プレイして思ったのがDLCの時系列変じゃない?ということでした。
    何度か周回してたどり着いた結論が、時系列が逆になっているんじゃないか?です。
    漁村事件があり、マリアが井戸に落葉を捨て、マリアが時計塔に住み患者と交流などしてから死に(生き返るのも主人公が時間を遡っているから)、様々な実験が行われ失敗作が産まれ(おそらくこの時期のどこかでローレンスがブラドーに殺されている。実験棟ですでに血の調整が行われたアデラインがいるので)、啓蒙と血を得て獣であり神秘を宿したルドウイークに変異し、教会から流れた血(の川)によってヤーナムの町に獣が蔓延った、という流れなんじゃないかと。
    ローレンスが大聖堂に実体を伴っていたのは、ローレンスの無念(果たせなかった約束故の)があの悪夢を形成していたからではないかと。
    簡単にまとめてしまったので矛盾しているところがあるかも知れませんがその矛盾を突き詰めるとさらに長くなってしまうので割愛。

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