2018年1月1日月曜日

ゼノブレイド2 考察1 ヒカリ/ホムラ

予定では二週目を終えてからレビューを書こうと思っていたのだけれど、なかなか時間が取れないのでヒロインについてだけ記すことにした

ホムラ

ヒロインというよりも母親っぽいという感想をよく目にするが、その印象は正しい。ただしその「母親」は一般的な「母親」というものではなく、言ってみれば「人類の母」としての「母親像」である

ここまで言えばわかる人にはわかると思うが、ホムラのモデルは「聖母マリア」である

紀元四世紀にはすでに成立していたというマリア崇拝は西洋の歴史のなかで大きな地位を占めてきた信仰で、その影響は神学、美術、音楽、文学その他多岐にわたっている。キリスト教とはマリア教のことだ、と喝破した学者もかつていたほどである

さて、処女のままキリストを懐胎したという聖母マリアは、その伝説の通り「矛盾」した存在である。この矛盾をゲーム上に再現したのがヒカリ/ホムラというキャラクターなのである

つまり聖母マリアにおける「処女性」をヒカリに、「母性」をホムラに分割したのだ(聖母マリアとマグダラのマリアという分割法とも思ったのだが、二者を融合させることに何らかの神学的、学術的な意味を見いだせなかった)

処女のまま妊娠できるわけがないじゃないか、という疑問はもっともで、「処女」という言葉は「乙女」を意味するヘブライ語を「処女」と誤訳したのだ、という説も存在する。ただし、宗教学的にはその説はほとんど無意味である。なぜならば、宗教学では「実際に処女が妊娠できるか」が問題なのではなく「処女が妊娠することがありえると信じた人々がいた」ことを重視するからである

以前なにかの考察で「異常出産」について触れたが、聖母マリアの処女懐胎もこの「異常出産」にカテゴライズされるものであろう(ちなみに「武蔵坊弁慶」は母の胎内に「3年」も宿っていたという伝説がある)

つまり異常な形で誕生した者は「特別な人間になる」のだという信仰が古代の人々には存在したのである

ピエタ

ミケランジェロの彫刻作品に『サン・ピエトロのピエタ』と題されたものがある
処刑されたキリストの亡骸を抱く聖母マリアの像である

古今東西さまざまにオマージュされてきた構図であるが(ゲームでいうと、ブラッドボーンのローレンスなど)、その構図はゼノブレイド2でも利用されている。それが以下の画像である

膝枕=ピエタといっているのではない。プレイした人ならわかるが、レックスはこの場面の少し前に「死んでいる」

つまり、レックスの死のあとにこの構図がプレーヤーに提示されるのである
キリスト教をほんの少しかじったことのある人間ならば、その意図にすぐ気づけるほど、それはあからさまである(西欧圏の人間ならばわざわざ指摘すらしないほど自明の事柄である)

実際にはこの場面の前にレックスは「生き返っている」ので厳密には相違があるものの、「生死の境」における「聖母の行為」としては定番の構図である。ただしそこにオマージュ以上の意味があるかというと、ちょっとわからない

ちなみにミケランジェロのピエタ像のマリアが若いのは、ミケランジェロに言わせると「マリアの若さは彼女の不滅の純潔を象徴しているのだ」かららしい

聖母の被昇天

Wikipediaによると聖母の被昇天とは、
聖母の被昇天(せいぼのひしょうてん)とはカトリック教会の用語で、聖母マリアがその人生の終わりに、肉体と霊魂を伴って天国にあげられたという信仰、あるいはその出来事を記念する祝日(8月15日)のこと。1950年、当時のローマ教皇ピオ12世のエクス・カテドラ宣言によって正式に教義とされた)[1]。
さて、聖母を天国へ連れて行ったのは「神」である。この神とは当然ながら「キリスト」のことでもある。ピエタ像における聖母マリアがホムラであるとすると、レックスはキリストに比定されることとなる

これをゼノブレイド2のストーリーラインに当てはめると、

レックスがホムラを楽園へ連れて行った(キリストがマリアを天国へ連れて行った)

となる

さらに聖母マリアが、眠りについたのちに被昇天したように、ホムラも永い眠りの後でレックスと出会い楽園へと向かうのである

以上の事柄からホムラは聖女マリアの「聖母」としての側面がとても強く出たキャラクターだと思われる。その属性は「母性」ではあるけれども、その「母性」は神的なものである

ヒカリ

一方「処女性」を担うヒカリはホムラよりも幼い人格になっている(とはいえレックスよりも少し年上の人格として描写されている)
おそらくヒカリのモデルがマグダラのマリアであれば、レックスと同年代かやや年下に描写したと思われる(罪深き女といわれることから、ブレイドとして最大の禁忌を犯したニアになるのかもしれない)

ちなみに処女マリアはすでに神的な存在であることが無原罪の御宿りからわかる
つまり、マリアは母の胎内にいるときから、「特別な存在」であったということだ

さてこの処女マリアは旧約聖書外典によると神殿で育てられたという。少女に成長したマリアのもとに大天使ガブリエルが訪ねてくる。有名な受胎告知の場面だ。その後、キリストの養父になるヨセフと結婚し、キリストを出産。やがてキリストの処刑に立ち会い、死後に天国へと昇る


眠り

なぜ聖母マリアの生涯を長々と話してきたかというと、ここにヒカリが眠った理由が隠されているからである

上記の聖母マリアの生涯要約において、ホムラが担当するのは「永き眠り(死)」と「被昇天」の場面である(ホムラとレックスによるピエタ像はおそらくは、オリジナルの出来事の再現である)

では、それ以前を担当したヒカリは500年前、何をしたのか

まず前提としてブレイドは妊娠できない(生殖による進化が出来ない)
よって処女懐胎云々はそもそも不可能である

上記の聖母マリアの生涯において、ヒカリが担当することが出来る役はひとつしかない

大天使ガブリエルである(構造を保ちながら「項」は自由自在に組み替えられる、というのが構造主義の基本的な考えであるが、長くなるのでここでは触れない)

先日のファーストインプレッションでも触れたが、ブレイドはキリスト教における天使と立場が近い。人間よりも霊的に優れた存在である天使は、しかし自分たちよりも劣った存在である人間への奉仕を神に厳命される

その神の決定に反旗を翻したのがルシフェル、のちのサタンである
このサタンの被造物としての悲哀を高々と謳いあげたのが、ミルトンの『失楽園』である

神の愛は人間にだけ注がれ、自分たちがいくら神を崇めようとも帰って来るのは冷たい反応のみ。なぜ神は自分たちを愛さないのか。なぜ人間だけを愛するのか

ここにはアベルとカインの主題も含まれている

さて、天界でのこの戦いにおいて、サタンの軍勢と戦ったのが天使長ガブリエル含む四天使である

ゼノブレイド2における500年前の戦争は、このサタンとガブリエルの戦いであったともいえる。つまり500年前の戦争においてサタンはメツであり、天の軍勢はイーラである(現在においては、イーラは堕天した元天使となっている)

その500年前の戦争において、ガブリエルの役割を担っていたのが


ヒカリである


聖母マリア、養父ヨセフ、神の子キリスト、大天使ガブリエル

このうちガブリエルはヒカリが担っていた。この推察を敷衍するのならば、

聖母マリアはラウラであり、養父ヨセフはアデルである

そして神の子キリストは、レックスとなる

レックスといっても現在のレックスではなく元型としてのレックスである

「悲劇的な結末を遂げるよう宿命づけられた少年と、それに立ち会うように宿命づけられた少女」

この元型的な関係が、ゼノブレイド2の世界で幾度も繰り返されてきたのだ
その最初の例が「クラウス」と「ガラテア」なのかもしれない(あるいはもっと遡れるか)

おそらくヒカリは500年前に「前レックス」が悲劇的な死に見舞われるのに立ち会っている(その瞳の色は「黄色」)

その苦痛に耐えきれなかったヒカリはホムラを作り出し、自分は眠ったのだ

やがてホムラも眠りにつき、その目覚めと共にレックスと出会う
レックスもまた死ぬように宿命づけられた存在であった

そして、それはシンによってレックスが心臓を貫かれることで確かに果たされる

だがここで宿命を打ち破る不測の事態が起きる
ホムラがレックスを生き返らせたのである

この例外的な出来事が後にクラウスを心変わりさせ、長い悲劇の連鎖を終わらせるのである

後記

なにぶん二週目をやってないので、そもそもストーリーをちゃんと理解できてない可能性がある

『失楽園』のサタンと天使の戦争がゼノブレイドにおける500年前の戦争であるという考察も、クリアしてだいぶ経ってから思いついたものである。

ヒカリに関しては処女マリアなのか天使ガブリエルなのか分かりにくくなってしまった
アデルが同調したブレイドであるから、マグダラのマリアでもいいのかなとも思う

DLCはイーラ編らしいので、ヒカリの掘り下げがあったらいいなと思う

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